あたしと彼と白いキャンバス
黒い柵で囲まれた土地は想像以上に広い。

門の向こうには石畳の道が続き、庭園の向こうに石造りの白い洋館がそびえている。


これはまぎれもなく豪邸、だ。



驚きのあまり思考停止状態で佇んでいると、また先輩に手を引かれた。


「俺の部屋はあっちだから」


門を潜り、庭園を横切る。

正面の洋館ではなく、その横にある赤レンガ造りの洋館に向かう。

白い洋館よりは小さいけれど、それでも一般家庭とは比べ物にならない建物だ。


「こっちは別館なんだ。母が油絵のにおいを嫌がってね」


本館とか別館とか…。

別世界に来てしまった気分。
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