あたしと彼と白いキャンバス
「食事の用意はできてるんだ。今持ってこさせるから」


先輩はそう言って、机の上の電話に手を伸ばす。


「――うん、着いたから。持ってきて。デザートはあとで」


受話器に向かって指示を出している。

たぶん内線なんだろうな。


手持ち無沙汰なあたしは棚の観察をはじめた。

油絵用の木製ケース、画板、スケッチブック、水彩絵の具、重なったキャンバスetc.



あ、スケッチブックから紙がはみ出してる。



引き寄せられるようにその紙を抜くと、それは画用紙だった。

淡い色の水彩画。
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