あたしと彼と白いキャンバス
ここに来たのと同じ車で、豪邸からマンションに帰る。


車の中、先輩はなにも喋らなかった。

謝罪も言い訳もない。

あたしも喋らなかった。

目が熱くて熱くて、泣きたかった。





「……ふ、」


玄関に入るなり、涙が零れた。

唇を強く噛んでも嗚咽が漏れる。



篠宮千里ははるな先生が好きで、
あたしのことは大嫌い。



それだけのことなのに。

それだけのことが、あたしの心を殺そうとしている。
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