あたしと彼と白いキャンバス
ああ、
こっちを好きになっとけばよかったな。

そうしたら傷つかずにすんだんだ。

新太郎先輩だったら振るにしても「大嫌い」だなんて言わないだろうし。



…でも、今更遅い。




「あ。…おいしい」


シンプルなパウンドケーキは濃い玉子の味がした。

素朴で懐かしくて優しい味。


「だろ? 俺、将来はパティシエになるんだわ」

「パティシエ…」

「そ。人間ってうまいもん食ったらなんか幸せになんじゃん」
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