あたしと彼と白いキャンバス
篠宮先輩はなにも言わなかった。

唇はわずかに動いたけれど、吐息だけが小さく漏れる。



「…さよなら」


先輩の上から退いたあたしは、
そんな捨て台詞を残して屋上から逃げ出した。




走る。走る。走る。


これで終わったんだ。

これで。



部屋に帰宅したあたしは引っ越しの話を進めてくれるようミカさんに頼んだ。


「きっと楽しい生活が待ってるわ」


あたしの髪を撫で微笑み、
ミカさんはエリカを連れて昼過ぎに帰っていった。
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