あたしと彼と白いキャンバス
教室に戻ると机の中にゴミのようなものがあった。


ぐちゃぐちゃに丸められた紙で、開いてみると真っ赤な液体が塗られている。

血液に見立てているんだろう。




クラスメイトたちがあたしの様子を伺っているのがわかる。

驚くものか。

くだらない。


あたしにとってアクリル絵の具の鮮やかな赤色は、見慣れたものだ。




あたしは表情を変えずに席に着いた。



「全然ビビんねーじゃん」

「なんだよつまんねー」

「反応薄すぎ」


志乃の席の辺りから、文句を垂れる女子たちの声が聞こえてきた。

あんなもの、ただの雑音だと思えばいい。
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