あたしと彼と白いキャンバス
午後の授業には集中できなかった。



考えたくないのに、
あの男のことが頭にちらつく。

高校生の男が一晩家に帰らなかった、なんて別に大したことじゃない。


大したことじゃないのに。





放課後、久しぶりに美術室に行く。


篠宮先輩はいない。

当然だ。


準備室に入って篠宮先輩のキャンバスを見てみたら、なんだか悲しくなった。



だって、
先輩の絵には感情がないんだ。


リアルで。

綺麗で。

ただそれだけ。



他にはなにもない。
< 197 / 321 >

この作品をシェア

pagetop