あたしと彼と白いキャンバス
先輩は機嫌よく微笑んで、あたしを見ていた。

きっと雛に食事させる親鳥のような気持ちで。


おかわりしても足りない。

全然足りない。


美味しい手料理をどれだけ食べても、身体の中央にぽかりと空いた穴が埋まらない。




「明日の朝、家に帰るよ」

「え」

「君には迷惑をかけた。感謝している」

「……」

「ありがとう」


あたたかい空気の中で先輩が言った。


これでいいのに、正しいのに、耳の奥でキィンと耳鳴りがはじまる。

…あたしはわがままだ。
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