あたしと彼と白いキャンバス
外に出ると、空では薄い紺と明るいオレンジが勢力を競い合っていた。

朝焼け。

その景色を綺麗だと思う余裕は、今のあたしにはない。




篠宮先輩の手があたしの手をぐっと掴む。


「来たよ」


駅のホームに電車が滑り込んだ。

あたしは先輩に引かれてその電車に乗る。


病院に向かう、電車に。


あたしの隣の座席に先輩が腰掛ける。


「大丈夫かい?」

「…はい」


耳に流れ込んだ自分の声は死んでるみたいだった。

なんだか足元がぐらぐらする。
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