あたしと彼と白いキャンバス
「…先輩」

「ん?」


呼びかけに応じて、先輩はゆっくりと視線を移動させる。

こちらを見る先輩の瞳は春の陽光みたいに優しくて、

あたしは息を飲んだ。



『帰っていいですよ』と言おうとしたのに。

もったいなくて、言えない。



「――いえ、その。付き合わせちゃってすみません」

「別に。俺のことは気にしないで」





途中で電車を乗り換えて、2時間弱。

到着駅から出ると見知った空気に包まれる。


離れてから1年も経っていないのに、懐かしいなんて。
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