あたしと彼と白いキャンバス
放課後、篠宮先輩は頬を腫らして美術室に来た。


「い…痛そうですね」

「ああ、痛いよ。父に殴られた。まあ、仕方ないな」


あたしたちはお互いをスケッチし合う。

室内は暖房が効いて暖かい。


「そっちはどうだったの」

「ええと、」


エリカの喘息を告げると、そう、とだけ呟いて先輩は作業に戻った。

深く詮索する気はないらしい。



「昨日はありがとうございました」

「気にしないでって言ったでしょ」



…気にするよ。
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