あたしと彼と白いキャンバス
先輩は人目を引く。

先輩に話しかけられているあたしを見て、あの女子たちはどう思っているのか。

…考えるだけで頭が痛い。


「考えてくれた? 例の件」

「例の件、ですか」

「そう。例の件」


子供が内緒話をするように、先輩は楽しげに肩を揺らす。

例の件、というフレーズが気に入ったようだ。


「…残念ですけど、お断りしようかと」

「なんで?」


あたしの返答を聞いて、今度は不満げに目を細める。



先輩がムカツクからです。

悔しいからです。

妬ましいからです。


――なんて、言えるはずない。
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