あたしと彼と白いキャンバス
振りかぶったキャンバスで、
男の背中を叩く。

すると男はあたしを睨み付けた。

けれど、今度はその顔を狙ってキャンバスをぶつける。


反撃の隙を与えたくなくて、何度も。



無我夢中だった。

火事場の馬鹿力ってやつだろう。



バキッと音がしてキャンバスが壊れた頃、先輩が背後から男に突っ込んで。

あたしに気を取られていた男は再び床に押さえ込まれた。


「結!」


男の腕を締め上げながら、先輩があたしの名前を呼ぶ。

汗だくで。

必死の形相で。
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