あたしと彼と白いキャンバス
110番して警察がくるまで長い時間に思えた、けど。

警察に犯人を引き渡して事情聴取を終えると、思ったより時間は経っていなかったことに気づく。





ふたりとも酷い有り様だった。


髪も服もぐちゃぐちゃで、

先輩のコートなんかボタンが取れてしまって。


「あー…、しんたろにプロレスの技教わっておいてよかった」


力の抜けきった表情で呟く先輩。


あんまり酷くていつもの美しさも相殺されてしまっている先輩を見て、
あたしは笑ってしまった。

すると彼は少しだけ膨れて。

でも次の瞬間には子供っぽい笑顔を生んだ。
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