あたしと彼と白いキャンバス
「あの人、何をしようとしてたんですか?」


問いかけたあたしに、先輩は眉をひそめて答える。


「準備室から絵を引っ張り出して、踏みつけてた。

たぶん壊したかったんじゃないかな」


ああ、それで足下にキャンバスが落ちていたのか。

思わず武器にして壊してしまったけど、あの絵は先輩のものだった。



「すみません、あたしが壊しちゃって」

「いや、俺の絵はいいよ。あれで身が守れたなら、それで」


先輩は微笑んで、
その瞳に優しげな色をのせる。
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