あたしと彼と白いキャンバス
先輩の左手が額から離れて、そのままこちらに伸びてくる。

迷うような指先の感触を頬に感じた。



その刹那――。

あたしは背伸びをして、
彼の唇にキスをする。


ほんの一瞬触れただけの、軽い口づけ。

でもきっと永遠に忘れない、口づけ。


「…好きです」


唇を離して、また告白を繰り返すと。

近い近い距離にある先輩の表情はみるみるうちに崩れて瞳から涙が溢れた。


「……本当に、酷い」


あたしの背中に先輩の長い腕が回り込む。
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