あたしと彼と白いキャンバス
強く抱き締められる。


ふたつの鼓動が高く聞こえた。

あたしと先輩の、心臓の音。


「酷い――」


すがるような声音とともにあたたかな雫が落ちて、あたしの肩を濡らす。



先輩。

先輩。先輩。


離れても忘れないで。

好きじゃなくてもいいから。

嫌いでもいいから。

あたしを忘れないで。

あたしは忘れないから。




――初めてキスした相手を、あたしは絶対に忘れない。
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