あたしと彼と白いキャンバス
「なーにふたりでコソコソ話してたんだよっ」


顔を洗って美術室に戻ると、新太郎先輩に突っ込まれた。

あたしと篠宮先輩は顔を見合わせる。

先輩の瞳は少し赤かった。

たぶん、あたしの瞳も。


「大したことじゃないよ」


冷静な声と態度でそう返した篠宮先輩に、新太郎先輩が近づいて。


「ふーん。あっそう。ほうほう。へえー」


うざい笑みをたたえつつ肩を叩く。


「ねえねえ、結ちゃん。今日、ちょっと買い物付き合ってくんないかなあ?」


次に志乃がぱたぱたと駆け寄ってきた。

新太郎先輩とはまったく違った可愛い笑みを向けられて、思わず頷くあたし。
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