あたしと彼と白いキャンバス
そうだった。

もしかしたら、あたしの絵もその犯人に盗まれた、なーんて。

…有り得る気もする。


先生に言ったほうがいいんだろうか。

いや、もう一度きちんと探してみよう。

それで出てこなかったら報告すればいい。




考え事をしながらの移動では、あっという間に美術室に着いてしまった。

扉を開けると案の定、先輩の姿が視界に入る。


「やあ、小早川さん」

「………」

「今日は逃げ帰ったんじゃないかと思ってたよ」

「あたしは逃げませんっ」


相変わらずの微笑みで佇む先輩に苛立って、あたしはつい敵意剥き出しの声を出す。

すると先輩は心底楽しそうに吹き出した。

なんて失礼な奴!
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