あたしと彼と白いキャンバス
「モデルやってくれる気になった?」

「なりません」


あたしは足早に準備室へと向かった。

キャンバスが出てくることを祈りながら。


「うーん。どうしたら引き受けてくれる?」


先輩の声は準備室にまで響いてくる。

こっちは描きかけの絵がなくなって不愉快にも拍車がかかっているというのに。

大量のキャンバスを引っ張り出し、一枚一枚確認していく。


「小早川さーん。あれ。シカト?」


違う。違う。これも違う。

あたしの絵は出てこない。


「…準備室でなにしてるんだい?」


あーもう!


「――うっるさい!!」

思わす、怒鳴ってしまった。
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