あたしと彼と白いキャンバス
先輩の声が途切れた。

きっと驚いているんだろう。


「絵を探してるんです。あたしの、描いていた絵がないんです! なくなったんです!」


あたしはヤケクソのように声を張り上げた。

わかってる、これは八つ当たりだ。


「だからこっちはイライラしてるんですよ!」


全身から怒りが溢れる。

けれど本当は泣きそうだった。

すごく悲しかった。

描いていた絵がなくなってしまったことが。



どんなに醜い絵でも、あれにはあたしの感情がこもっているんだ。
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