あたしと彼と白いキャンバス
「…探すよ、俺も」


先輩はいつの間にか準備室の扉に凭れて立っていた。

あたしの背中に視線が刺さる。


「見つけるから。絶対」


ぐずった子供をあやすような、声。

優しさを感じるより先に、悔しかった。

嫌いなこの男の前で、こんなふうに感情を荒げてしまった自分が。




「…じゃあ、交換条件で」


あたしは先輩に背中を向けたまま、提案を口にした。


「絵を見つけてくれたら、モデルやってもいいです」
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