あたしと彼と白いキャンバス
美術室の壁には先輩の絵が飾られている。

高校美術展で賞をとった絵。



老人が将棋を指している、写真のようにリアルな油絵だ。

フィクションが入り込む余地がないような、
完璧な世界がキャンバスに描かれている。

人物も背景も色も空気も酷く生々しい。




篠宮千里は才能がある。

見たものを忠実に再現できる完璧な才能が。


だから、あたしはこの男が嫌いなんだ。




片付けはじめたあたしを尻目に、先輩は開け放した窓の外を見ていた。

「寒いな。そろそろ雪が降るかも」


先輩の吐く息は白い。
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