あたしと彼と白いキャンバス
先輩は観念して鞄からノートを取り出した。

男子生徒はそれを奪うように受け取り、また走って校舎の中へ。



……まるで嵐だ。


こちらに向き直した先輩のブレザーには、今のやりとりでシワができていた。


「えーと。今の俺の友達なんだ。後藤新太郎(ごとう・しんたろう)」

「はあ…」

「ああ、俺たちもはやく教室に戻らないとね」


あたしと先輩は並んで歩き出した。

歩みは自然と早足になる。




「じゃあ、美術室で。楽しみにしてるから」


先輩は微笑んでいた。

友人にする人間っぽい表情とは違う、人形みたいな美しさで。
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