あたしと彼と白いキャンバス
「なんですかこれ」

「子供の頃に貰ったぬいぐるみ。趣味悪いだろ? …で、この布巻いて」


先輩はぬいぐるみに白い布を緩く巻いた。

なるほど。

こうすると赤ん坊のように見えなくもない。


「抱っこして。マリアみたいに」

「聖母的なイメージですか」

「いや、子守りしてる子供を描きたいんだけどね」


子供かよ!




キャンバスの上に木炭を走らせる先輩の表情は、普段とはまた違っていた。

唇を引き締め、眉根を寄せて。

真剣を通り越して苦しそうにも見える。
< 59 / 321 >

この作品をシェア

pagetop