あたしと彼と白いキャンバス

ねえねえ、おとうさん。このえ、だれの？

『この絵はルノワールの作品だよ』

るのわーる？

『ピエール＝オーギュスト・ルノワール。印象派の画家だね』

このおんなのひと、やさしそう。

『この絵が気に入ったのかい？』

うん。このおんなのひと、すき！

ゆいのおかあさんも、こんなおんなのひとだった？

『…そうだね、優しい人だったよ』

わあ、じゃあ、このえはゆいのおかあさんににてるんだ！

るのわーるのえ、すき！

ゆいのおかあさんのえ！





目が覚めると、もう朝だった。


「夢、か…」


懐かしい夢だった。

あたしが絵を好きになった、あの日。

お父さんの笑顔はどこか寂しげだった。