あたしと彼と白いキャンバス
お賽銭を投げて、手を叩いて。


あたしはなにを祈ろう?




『俺のことを嫌いな小早川さんが、大好きだよ』


ふいに篠宮先輩の顔が浮かんだ。

あのときの声が、台詞が、まるで今言われているみたいに再生される。



…ああ、もう自分の頭の中までわけがわからない。




結局、あたしはなにも祈らなかった。

なんだか心臓が痛い。


そのあとは志乃と一緒にファミレスで食事したけれど、

ほとんど味を感じることができなかった。
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