「 CRAZY C@ 」
さっさと簡単に準備を済ませリビングへ行くと
もう日和はいなかった。
家を出ると、自転車に乗って
ロールパン(6個入り)の袋を持った日和が
あたしを待っていてくれた。
『早く乗れ、チビ助』
そう、あたしは自転車に乗れないのだ。
あたしが荷台に座るか座らないかというところで
自転車は勢いよく走り出した。
時刻は8:21。頑張れば間に合う。
『和泉今日の軽音の体験入部行くの?』
そう言いながら日和はあたしに
ロールパンの袋を渡す。
(中身はもう2個しか残っていなかった。)
軽音部。あたし達はそのためだけに
第一高校を受験した。
この学校からデビューしたバンドは少なくない。
頭の良さは中の下、運動部の成績も、
県大までいけばいい方。そんな高校だが、
第一高校の軽音部だけは有名であった。
「日和は行くの?」
『聴くだけなら行かん。』
「なんで?」
信号が丁度赤に変わる。
日和は小さく舌打ちをすると、くるっと振り返った。
『下手な演奏聴いてるほど暇じゃねぇの。』