楽園─EDEN─
「イ────ウ゛────ッ!!!」
カンカンカンッと、銀製のフォークを大理石のテーブルにぶつけ……否、激しく叩きつけながらエリゼはけたたましくその執事の名を呼んだ。
その声音は、明らかにイラついて棘がある。
「エリゼ様」
それを見かねてか、側に仕えていた若きメイド頭であるスズネが、静かな口調でたしなめた。
「何よ、早く来ないイヴが悪いんでしょ」
そう言って、フイッと顔を反らした主にスズネは小さく溜め息を吐く。
若くしてメイド頭になった彼女は、元より口数が少なく表情もあまり豊かな方ではない。
あまつさえ、その寡黙さに拍車をかける漆黒の髪と瞳が、彼女の神秘的な雰囲気と威圧感に輪をかけて魅力あるものにしていた。