楽園─EDEN─
「………はい?」
しかし、イヴはその姫君が発した突然の言葉を理解しがたかったのか…眉根を寄せたまま、そんな間抜けた声を発した。
「だ、か、ら…街にお買い物に行きたいの」
それに対し、小首を傾げ猫なで声で言うエリゼの瞳には、心なしか悪どい企みにギラつく野心が窺える。
「ダメです」
だが、そんな自分の言葉を一蹴する"否"の声が、真横から発せられ、エリゼはビクリと肩をすくませた。
その声音には、どうあっても動かしがたい堅固な意思が含まれている。
「何で!?」
突如差し挟まれたその返答にエリゼは納得がいかず、明らかにムッとした様子で頬を膨らませ、横に控えていた彼女に視線を移した。
「……」
しかし、主のその多大なる非難の視線を受けても、一向に動じる様子を見せないスズネにエリゼは尚更苛立つ。
その証拠に、彼女の小さな眉間には刻まれるハズのない程のたくさんのシワがあった。