ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~
シャツの袖を捲って、やる気満々。
青山って本当に歌うのが好きなんだなぁ。 なんてことを思いながら、歌本に視線を落とす。
そのすぐあと、曲が始まった。
その歌は、少し前にやっていたドラマの主題歌。
毎週楽しみに見ていたドラマだったから、今でもドラマの内容が鮮明に頭に浮かぶ。
青山の声、やっぱり綺麗だなぁ……。
と、そこへ男の店員さんが飲み物を運んできて、青山と私に優しく笑いかけたあとに出ていった。
しょっちゅう来てるって言ってたから、本当に青山は店員さんたちと仲良しみたい。
年上の人と仲良く話せるなんて凄いなぁ。
しかも、受付のお姉さんとはタメ口だったし。
社交的な青山を、ほんの少しだけ羨ましく思いながら、運ばれてきたアップルジュースを口に運んだ。
……その後の青山は、とにかく凄かった。
視線は歌本にやったまま、音程を外すことも歌詞を間違えることもなく曲を歌い終える。
そこで出た点数は、92点。
いきなり90点越えなんて、信じられない……。
凄いなぁ。 これを見たら、やっぱりみんな意識するようになっちゃうかも……。
歌っている青山の声は、いつまでも聴いていたくなるような声だ。
甘く優しく、それでいて力強くもあり、迷いのない綺麗な声。
普段の青山とは違う青山がそこに居る。
「結城はなんか歌わないの?」
うーん……92点の後は、さすがに歌いづらい……。
ていうか最近の曲ってあんまり知らないし、それに私、下手くそだし。
「あー……私はしばらく見学してま〜す」
「そう? 結城の声聴きたかったのに。 まぁ時間はたっぷりあるし、そのうち歌えよー?」
「うん」
楽しそうに笑う青山は次々に曲を入れていき、4曲くらい入れた後、ようやく画面を見て歌い出した。
だけどその4曲ってのが不思議な選曲で……。
1つ目は学園祭で歌ったラブソング。
2つ目は懐かしのアニメソング。
3つ目はなぜか演歌。
そして4つ目は、超有名な外国映画のテーマ曲。
ジャンルはバラバラだけど、どれも妙に上手くて、一番低い点数でも86点……。
青山は、とにかく歌が上手かった。