ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~
洗濯してもらってる服は、後日村雨くんを通して渡してもらうことになり、今着ている服は「もう着ないから」ということで、そのまま頂けることになった。
「また来てねー」と笑う村雨くんのお母さんに頭を下げ、家を出る。
雨はすっかり上がっていて、太陽の光が水溜まりにキラキラと反射してる。
そんな帰り道を歩いている時も、村雨くんは無表情で無言だった。
彼が何を考えているのかまったくわからなくて、私もただ無言で歩いてる。
……私たち二人の場所だけ、重苦しい空気のまま進んでる感じ。
村雨くんがようやく口を開いたのは、私の家の近くに来た時だった。
「携帯、返すの忘れてた」
「あ……うん」
びしょ濡れになった状態で、公園のベンチに置いていた携帯。
その存在自体、すっかり忘れていた。
「それと明日のことだけど、初めに言ってたように、僕は良太郎のところに居る。
結城さんも、良太郎のところに居てくれたら嬉しい」
「……うん、わかってる」
「じゃ、明日よろしく」
「あっ……うん、バイバイ……」
伝えたいことだけを伝えて、村雨くんはさっさと元来た道を引き返していった。
まさに「業務連絡」って感じで、なんの感情も感じられなかった。
今までの村雨くんとはまったく違っていて、まるで別人のよう……。
だけど私は、そんな村雨くんに何も言うことが出来なくて、小さくなっていくその背中を、ただただ見つめるしかなかった。