ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~
油断した。
まさか、携帯を取られるなんてっ……!!
「それ、プライバシーの侵害……」
「じゃあ、代わりに俺のを奈央ちゃんに預けるから、好きに見ていいよ」
と、犬飼くんの携帯を渡されたけど……そういう問題じゃないよ〜……。
うわわ……絶対メールボックスを見られてる。
「メールで」なんて言うんじゃなかった……。
「……犬太郎と、メールでの関係、か」
……ポツリと呟いた犬飼くんは、携帯を返してから近くのイスに座り、どこか遠くを見た。
「啓介ってさ、昔から俺たちを優先してきたんだよね。
“自分はあとでいいから”って」
「……うん、青山もそう言ってた」
「啓介は、また俺のことを優先しちゃったね。
俺が笑顔になるから、って……だからって自分のことは我慢? なんで、俺を優先しちゃうかな」
苦笑気味に笑ったあと、犬飼くんは背もたれに体を預けて足を組んだ。
「……俺ね、奈央ちゃんと一緒に居られるのは嬉しいよ。
でも、だからって人の女を奪うなんて、そんなの本気でするわけないじゃん」
「え……?」
「ごめんね、本当はあいつを試しただけだったんだ。
いつも俺たちを優先してきた啓介だけど、今回は“1番大切な人”のことだから……だから絶対に引くわけないって思ってた。
酷いやり方だなってわかってたけれど、でもね、俺のことじゃなくて、自分のことを大切にするあいつを見たかったんだ。
だけど実際あいつは呆気なく身を引いた。 ほんと、呆れるくらいにね」