ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~
犬飼くんは、啓介くんを試してた……?
「奈央ちゃんも、“啓介は承諾した”って話したらもあっさり承諾しちゃったし。
“それは違うだろ”って心の中で何回思ったか」
「あ……」
「ま、啓介の言葉を聞いたあとだったら、全部どうでもよくなっちゃう気持ちはわかるけどね。
でも、“大切な人”のことなんだから、あっさり引いちゃダメだよ」
……犬飼くんは、私のことも試してたんだ。
だけど私も啓介くんも、犬飼くんが望んだ答えは出せなかった。 ううん、出さなかった……。
「吹っ掛けてごめんね。
でも、啓介がこの先もずっと“誰か”を優先していくのはよくないと思うんだ。
もちろん、渉のように全部自分勝手に進めてくのも問題だけど。
だけど、啓介は遠慮しすぎてる。 大切なものを守る時ぐらいは、自分の想いをハッキリ言うべきだろ?」
「……うん」
「でも、なかなか難しいね。
渉くらい馬鹿な方が扱いやすいけど、啓介は馬鹿じゃないし、それに……俺の父親と同じように頑固だから。
頑固者にあれこれ言っても、余計頑固になる。 それでも俺は、啓介の想いをちゃんと聞きたかったんだけどね」
ふっと息を吐いて笑った犬飼くんは、私の頭を静かに撫でた。
「奈央ちゃんも、もう少しワガママになっていいと思うよ。
“啓介くんがこう言ったから、じゃあ私も。”なんてやってたら、傷つくだけだもん」
「……うん……」
「でも困ったなぁ。 奈央ちゃんは自分の気持ちをちゃんと話したのに、それでも啓介は俺を優先させた。
これ以上何かを言っても、多分啓介は変わらないだろうね」
……うん。
私が何を言っても啓介くんは受け入れてくれない。
そんな風に感じたし、実際にそうなんだと思う。
だからもう、どうすればいいかがわからない……。