ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~
「奈央ちゃんってさ、俺のこと友達以上に思うのは絶対無理だよね?」
「あ、うん……ごめんね、友達以上には、思えない」
仕草や笑顔にドキドキすることはあるけれど……でもそれって、他の女の子たちと同じなんだと思う。
「みんなのアイドル」である犬飼くんが、「自分」を見て笑ってくれたら誰だって嬉しくなるし、ドキドキする。
それを「恋だ」と言う人は居るけれど、私はきっと、恋ではない。
「奈央ちゃんは、俺と友達以上になるのは無理だって思ってる。
だけど啓介は、俺と奈央ちゃんをくっつけたい。 そうすることが、俺の幸せだと思っているから」
「うん」
「んー……困ったなぁ。 全部俺のせいじゃん。
“卒業まで奈央ちゃんと居たい”なんて言わなきゃ、二人は幸せだったはずなのに」
言いながら、私の携帯を再び奪う。
「でも、遠慮してばっかりの啓介を変えるチャンスだよね。
吹っ掛けたのは俺、だから俺が責任を持ってあいつを変える」
犬飼くんはニコッと笑いながら、何回かボタンを押したあと……携帯を耳に当てた。
「あいつ、奈央ちゃんの言葉にまだ返事してないんでしょ? 今から呼ぶから直接言わせる」
「や、でも……」
……電話して呼んで、それで直接言わせるなんて……そんな簡単に上手く行ったら、「今まで悩んでたのはなんですか?」ってことになるんじゃ……?
それに、私の携帯からの電話だから……多分啓介くんは、出てさえもくれないと思う。
「うわっ、あの野郎、なんも言わずに切りやがった」
……やっぱり。
メールのことを話すんじゃないか?って考えると、私でも切ったと思う。
「あーもう、ヤバい。 俺キレるかも」
き、キレるって……いつもニコニコしてる犬飼くんが……!?
「今度はこっちでかける」
と、今度は自分の携帯を耳に当てるけど……。
「……まーた切りやがった」
さっきよりも冷たい声でそう言った犬飼くんは、自分の携帯を、物凄く速いモーションで近くの机に向かって投げ捨てた……。