ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~
「村雨くんっ……!!」
「わっ……」
その顔を確認した瞬間、涙はもっともっと溢れ出して、思わず、村雨くんを抱き締めてしまった。
「どうしようっ……私、青山にキスされちゃった。
それに、犬太郎が……彼が私のことを待つって言ったの。
わ、私、何も出来なくてっ……みんなの想いとか、全部グチャグチャになっちゃって……どうすればいいか、わかんない……」
うわーん、とまるで子供みたいに泣く私の肩に手を置いて、村雨くんが1歩下がった。
「結城さん、落ち着いて」
「もう、わかんない……」
「とにかく落ち着いて。 ね、大丈夫だから」
もう、私ダメだ……。
どこか遠い街に行きたい。 そうだ、アメリカ。 アメリカに行こう。
「私、旅立ちますぅ゛……」
「……何馬鹿なこと言ってんだよ」
「私が居るとグチャグチャになるんだもん。
だから私、今すぐ街を出ていく……」
もう青山の前に出られない。
他の人たちとも、もう何も話せない……。
「……結城さん、すぐそこだから、ウチに寄っていきな?
ウチで少し休んで、落ち着いて話して」
「でもっ……」
「いいから、来て」
村雨くんに手を引かれ、フラフラになりながら道を進んでいく。
そして、村雨くんのお家に到着した。
「深呼吸して。 大丈夫だから」
リビングに案内され、そのままソファーに座らされる。
それからタオルと飲み物をテーブルに置いた村雨くんは、そのまま静かにどこかへ行ってしまった。
鼻をグズグズさせたままタオルで涙を拭い、麦茶を飲む。
……一人きりの部屋は、凄く静かだ。