ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~


男の子のお家に入るのなんて、初めて……。

初めてがこんな時なんて、ムードも何もないけどね……。


「結城さん」


村雨くんが、携帯を耳に当てた状態で戻ってくる。
電話の相手は、多分青山……。


「渉が話したいって」


……やっぱり。
首を何度も横に振るけれど、村雨くんは携帯を差し出したまま動かない。


「大丈夫だから。 ね?」

「う……」


絶対に引かない村雨くんを見つめたあと、仕方なく電話を受け取る。


『結城、ごめん』

「……ごめんで済めば、警察は要らない……」

『……悪かったよ、本当に』


いつもの青山と違う、凄く悲しそうな声。


『もう俺ダメだ』

「えっ……?」

『結城の居ない街に行く……アメリカとかそっち。
もう結城に合わせる顔がない』


アメリカ、って……私が行こうとしてた場所……。


『本当にごめん。 あんなことするつもりじゃなかったんだ』

「………」

『こんな風にするつもりじゃなかったんだ。
でも俺、結城のことが好きで、結城にもっともっと近づきたくて……そう思ったら、止められなかったんだ……』


今にも泣き出しそうな青山の声に、なんだかこっちまで涙が出そうになる。

私は、どうすればいいんだろう……。

と、その時。 村雨くんが私の手から携帯を奪い取った。


「渉。 結城さんは今、色々なことに悩んでる。
少し自重して。 面倒を起こすな。
彼女はこのまま、僕が預かる」

『え、ちょっ――』


ピッ、と電話を切り、村雨くんは携帯をテーブルに置いてしまった。


「少し、話したいことがある」


メガネの奥の瞳が、真っ直ぐ私を見つめている……。


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