ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~
パンッ……という乾いた音が響く。
それは、青山の拳が村雨くんの掌に収まる音だった。
「……僕は、渉とは友達で居たい」
「俺も、お前とはダチで居たいけどな……引けねぇもんっつーのがあるだろ」
「なら、僕も引けない」
男の子の中では小柄な方だろう村雨くんが、青山の拳を受け止めている。
それどころか、青山を押し返してるみたい。
「お前……結城に何した?」
「手に触れただけで怒るなよ。
自分はいつも、しっかり握るくせに」
「俺は、彼氏役だからだろ……」
「じゃあ今日から僕が彼氏役になる。それで文句ないね?」
……なんか、話が変な方向に進んでる。
それに、いつも冷静な村雨くんが、今はその冷静さをなくしてるみたい。
「結城は俺のだぞ?」
「なんで勝手にそう決める?
そうやっていつも結城さんを傷つけてる、わからないのか?」
二人の視線が、バチバチと音を立ててぶつかってる。
「彼氏役だからって何をしてもいいわけじゃないだろ?
結城さんはね、泣いて僕を頼ってきたんだよ。
だから今こうしてる。 その原因を作ったのは誰? 渉だろう?」
「うっ……」
「自分で原因を作ったくせに僕を責めるのはやめろ。 理不尽にも程がある」
な、なんか……案外村雨くんは、冷静かもしれない。