ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~


パンッ……という乾いた音が響く。

それは、青山の拳が村雨くんの掌に収まる音だった。


「……僕は、渉とは友達で居たい」

「俺も、お前とはダチで居たいけどな……引けねぇもんっつーのがあるだろ」

「なら、僕も引けない」


男の子の中では小柄な方だろう村雨くんが、青山の拳を受け止めている。

それどころか、青山を押し返してるみたい。


「お前……結城に何した?」

「手に触れただけで怒るなよ。
自分はいつも、しっかり握るくせに」

「俺は、彼氏役だからだろ……」

「じゃあ今日から僕が彼氏役になる。それで文句ないね?」


……なんか、話が変な方向に進んでる。
それに、いつも冷静な村雨くんが、今はその冷静さをなくしてるみたい。


「結城は俺のだぞ?」

「なんで勝手にそう決める?
そうやっていつも結城さんを傷つけてる、わからないのか?」


二人の視線が、バチバチと音を立ててぶつかってる。


「彼氏役だからって何をしてもいいわけじゃないだろ?
結城さんはね、泣いて僕を頼ってきたんだよ。
だから今こうしてる。 その原因を作ったのは誰? 渉だろう?」

「うっ……」

「自分で原因を作ったくせに僕を責めるのはやめろ。 理不尽にも程がある」


な、なんか……案外村雨くんは、冷静かもしれない。


< 64 / 266 >

この作品をシェア

pagetop