ある日モテ期がやってきた!!~愛されすぎてどうしよう~
「あのね、渉。 結城さんが好きなのはわかるけど、今は堪えてほしい。
渉が押せば押す程、話がややこしくなるんだよ」
「……あぁ、わかったよ……わりぃ」
二人の手が離れ、視線も離れる。
……なんとか収まったみたい。
それにしても、青山の馬鹿力を押し返しちゃうなんて……村雨くんって、結構……というか、かなり凄いかも。
「結城さん」
「あ、はいっ!!」
あんなのを見た後だから、なんだか変な緊張が……。
「明日の夕方まで、まだ時間がある。 “あの件”は、ゆっくり考えてください」
明日の、あの件……。
それって、犬太郎と会うかどうかの話だよね。
会うかどうかを、明日までに決めなくちゃいけないんだ……。
「啓介、“あの件”ってなんだよ?」
「僕と結城さん二人だけの秘密」
「はぁ!? なんだよそれ!!」
「だから、渉が入るとややこしいんだって。
少し自重して。 そう言ったよね?」
「うるせー!! 次長だか課長だか知らねーけど、話せよ馬鹿!!」
「絶対言わない」
ギャーギャー騒ぎ続ける青山と、澄ました顔の村雨くん。
二人を見ていたら、なんだかおかしくって、ついつい笑ってしまった。
そんな私を見た二人は、顔を見合わせてから笑い出す。
さっきまでは妙な雰囲気だったけど、今はこうして、いつもみたいに笑ってる。
嬉しいような、楽しいような……よくわからないけれど、でも、心の底から笑ってる“今”に、私は確かに幸せを感じていた。