絶えぬ想い、君に
慎吾の言いたいことはわかった。
でも、よく自分の気持ちはわからなかった。
「乃亜ちゃん、覚えてねぇのかな。内田のこと。」
「どうだろうな。」
「もう内田の話とかしないの?」
「しない。正直、おばあちゃんがお姉ちゃんは外国にいるって言ったことすら、乃亜が覚えてるかわかんない。それに、“お姉ちゃん”って言葉を聞かない。」
「…そっか。でも、仕方ねぇよな。赤ちゃんだったんだもんな。」
「うん…」
そんなことを慎吾と話してると、向こうの方で遊んでる池内と乃亜が見えた。
昨日の体育祭もそうだけど、きっとあそこにいるのは、菜緒だったのにな。
乃亜が遊ぶのも池内じゃなくて菜緒で、遠足に来るのも俺じゃなくて菜緒。
菜緒はずっと乃亜が成長してくのを楽しみにしてた。
幼稚園に入った乃亜とか。
大きくなった乃亜と一緒に過ごすのが夢だと、菜緒は俺に言った。
俺が「過ごすだけでいいの?」って聞いたら、「一緒にいられるのが1番だよ。」って言われたのを覚えてる。
そして、「そこに京平もいたらいいな。」って照れながら言った。
君が夢に見たものに、今、俺がいる。
だけど、菜緒はいない。
君の夢を俺が1人で叶えてしまっている。