~LOVE GAME~
「いただきます」
「いただきまーす」
声をそろえて挨拶をしてから、夕飯を食べ始まる。
そしてふと疑問に思ったことをお兄ちゃんに聞いてみた。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
「例えばなんだけど、自分は覚えてないけど相手は自分を知っていて、覚えてるってことある?」
「? 何だそれ」
サラダに手を伸ばしながら不思議そうに聞いてくる。
意味が分からないという様子だ。
当たり前か。話している私もわかっていないのだから。
うーん、説明が難しいな。
「ん~、いや、ちょっと聞いただけ」
「よくわかんねぇけど、知らないうちに接点持ってたとか、そんなん?」
「ん~、かなぁ」
だよねぇ。
やっぱり、いつの間にかどこかで知り合ってたのかもなぁ。
首をかしげながら、あとでちなに電話して話聞いてもらおうかなと考える。
お兄ちゃんは「覚えてないならたいした知り合いじゃないな」とドライだ。
「なんでそんなこと聞いて来るんだよ。楓と知り合いだって言ってくるやつでもいたのか?」
食べる手を休め、じっと私を探るように見てきた。
その視線にギクッとする。
「え? あ、ううん。別に? ただ聞いてみただけ」
「ふぅ~ん」
苦し紛れの言い訳に、疑うような目つきで見てきた。
その視線から逃れるようにご飯を口に運ぶ。
あまり勘ぐられないようにしないと……。
お兄ちゃんに本当のこと言ったって、食いついてくるのは話の内容じゃないもんなぁ。
相手が誰かってことだもん。
「付きまとってくる“男”がいたらお兄ちゃんに言えよ?」
「う、うん」
ほらでた。シスコンめ!
お兄ちゃんは今、大学4年生で実は超シスコン。
年が離れているっていうのもあるけど、何より、昔からお父さんが出張や単身赴任が多かったから、妹は俺が守るって感じで育ってきている。
だから感覚としては兄と言うより、父に近い保護者なのだ。
そんなお兄ちゃんだからこそ、お母さんは家を空けても安心なんだろうけど……。
私もお兄ちゃんのそんな感じに慣れてしまっているため、またかくらいで特に気に留めない。
「学校はどうだ?」
「楽しいよ。クラスの仲も良いし。良い子ばかり。あ、でも学級委員になっちゃった」
「学級委員!? お前に出来んのか?」
ストレートな失礼発言に思わずムッと膨れる。
でも大きな声で自信もって出来ますとは言えない……。
「…たぶん」
「まぁ、頑張れ」
そう言って意地悪くニコッと笑う。私のこれからの苦労を見透かしているようでなんだか気分が悪い。
コホンとひとつ咳払いをして話題を変えるために、お兄ちゃんの話に変えた。
「お兄ちゃんは、勉強どう?」
「まぁまぁだな」
お兄ちゃんは近くの医大に通っている。
医大生も大変だよね。
でもお兄ちゃんは医大をストレートで合格したほどの頭の良さなのに、なぜ私の成績はてんで駄目なのか。
同じ親から産まれたはずなのになぁ……。一生の疑問だわ。
思わずため息がもれた。