~LOVE GAME~

――……

朝、学校に着くと中庭の一部に人だかりが出来ていた。
学校の中庭にはベンチやバスケットゴールがあり、昼休みになるとお弁当を食べたりバスケをして遊ぶ人等で賑わっている。
それが、朝の時間帯に人だかりができているのはどういうわけか。
すると人だかりから「キャー!!」と黄色い歓声があがった。
女の子たちがキャッキャキャッキャとははしゃいで喜んでいる。

朝っぱらからなんだなんだ~?

眠気眼をこすりながら、引き寄せられるように人だかりの方へ寄っていく。
みんなが見つめるその先には、数人でバスケットボールをする男子の姿だった。
そして、その中にある人物を見つけた。

あっ…………。

あの春岡龍輝の姿もあったのだ。
なるほど、この人だかりも黄色い声援も彼が集めているのかと納得がいく。
パシュッ。
心地よささえ感じるくらいに、綺麗なシュートが入った。
龍輝君が決めるたびに女の子達の大歓声が上がっている。
凄いなぁ。龍輝君って本当に大人気なんだね。
感心して見ていると、楽しそうに友達とハイタッチをしている龍輝君がこっちを振り返った。
そして、見ていた私とバッチリ目が合う。

わっ! 目が合っちゃった。

龍輝君は“あっ”という表情をした後、フッと柔らかい笑顔を見せた。
ドキッと心臓が高鳴る。
瞬間、“キャァァー”と女の子達が大喜びをしてハッと我に返った。

「こっち見たー!」
「あの笑顔ヤバイ!」
「カッコイイー!」

などなどの声が上がる。
わかる……。ちょっとわかるよ。
笑っただけなのに、私もドキンとしてしまった。
なにあのキラキラした笑顔。同い年には見えない色気が出ているんですけど!?
学年問わず黄色い声援浴びているのに動じないし。
思わず恥ずかしくなって挙動不審になりそうだった。
赤くなった私は人だかりから一歩下がった。
声援に圧倒されたというのもあるけれど、ドキドキしたこの気持ちをどうしていいかわからなかったのだ。

ってか、何赤くなってんの!
ミーハーみたいで恥ずかしいっ。

そう、ぺしぺしと頬を軽くたたいた。
だいたい目が合ったのも気のせいだ。
ちょっと知り合ったからってあんな所から私に気がつくはずない。
たまたまこちらの方を見て笑っただけだ。
それなのに目が合ったとか、自意識過剰にもほどがある。
あれだな。アイドルのコンサートに行って、目があったとか私を見てくれたとかいうのと同じだ。
実際は私を見たのではなく、私の場所の方角を見たにすぎない。でも目が合ったように感じるだけ。
そうだそうだ。
よし、そうとわかったらさっさと教室行こうっと。
ひとり納得してクルリと踵を返すと、目の前に立っていた人とぶつかってしまった。

「わわっ!」
「おっと! ごめんっ。大丈夫!?」

よろけると、相手が倒れないように腕をつかんで支えてくれた。



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