~LOVE GAME~
「ごめん……。あ、松永さん?」
「あたた……。あれ、貴島君だ」
目の前には驚く貴島君がいた。
ぶつかったのは貴島君だったのか。
「大丈夫? 痛かったでしょう?」
心配顔で私を覗き込む。
わわっ! こっちもイケメンだった!
なぜか慌てて一歩離れる。
だめだ。朝の半眠状態ではイケメンのキラキラには耐性が付かない。
動揺しまくりだ。
「いやっ、私こそごめん! よそ見してたから」
私も貴島君に謝った。
大丈夫か!? 自分。龍輝君の笑顔を見てから変に動揺してるかも。
「松永さん……」
「えっ!?」
呼ばれてハッと顔を上げる。
見上げた貴島君の視線は人だかりを見ていた。
「……春岡、見てたの?」
「えぇっ!?」
戸惑うと、貴島君は視線を私に戻した。その眼が真剣で少し驚く。
「見てたの?」
「いや、あの、見てたっていうか、ただ人だかりがあったから見に行ったというか……」
しどろもどろで答える。
というか、なんで言い訳みたくなってるの!?
そしてなんでいまだに動揺してるの!?
自分でも訳が分からず、頭をかく。
貴島君は“そう…”と呟きニッコリ笑いかけた。つられて私も笑い返す。
「松永さん、一緒に教室行こうか」
話が変わり、ホッとした。時計を見ると、確かにもうすぐ始業時間だった。
そろそろ教室に行かなければならないだろう。
周りの人たちもパラパラと教室に戻り始めていた。
「あ、うん。そうだね。もうすぐ始まる時間だもんね」
「ね。戻ろう」
そう貴島君に促される。
そして私はそっと肩を押され、貴島君に押されるように歩きだした。
早く教室へ行こう、という気持ちばかりで、私は気が付いていなかった。
後ろでそんな私達をじっと龍輝君が見ていただなんてーーー………………
――――――――…………
懐かしい声がする。
『かえでちゃん! 待ってよ、かえでちゃん!』
大好きなあのこの声がする。
『かえでちゃん!』
『かえでちゃん!』
一際大きな声がして振り返る。
そしてーー………………
「ハッ…!」
身体がビクンとして目が覚めた。額にはしっとりと汗をかいていた。
部屋の中は薄暗い。しかし、カーテンの隙間から薄ら光が漏れていた。
周りを見渡して、そこが自分の部屋だと確認し、安堵のため息がもれた。
ベッドから半身を起こす。
まだ心臓がどきどきと激しく脈を打っていた。
夢……みてた?
……一体なんの?
どうやら目が覚めたら忘れてしまったようで、内容を思い出せない。
でも、その夢が決していい夢ではなかったことだけはよくわかる。
思わず自分で身体をさすってしまった。
ベッドサイドにある時計で時間を確認する。
時計はam6:00。
朝か……。
怖い夢でも見てたのだろうか。
まだ心臓がバクバクしており、落ち着かない。
でもなんだろう。
この感じ。
大切な夢だったような気がしてならなかったーー……
学校に着いて、早々に自然と大きな欠伸がでる。
ふぁぁ~。
私は大きく伸びをした。
「眠い~……」
机の上におでこをつけて呟く。
変な夢のせいでなんだか眠気が残っている。
あれから寝れなかったし。
結局、今日は早起きしちゃったよ。もったいないと思うが仕方ない。
「1時間目から寝てたくせにまぁだ眠いわけ?」
机につぶれる私にちなが呆れた声をだす。
だって~。
膨れるとちなが教科書を手渡した。
「ほら次、移動教室だよ? 行こう」
「うん」
寝ぼけ眼のまま、ちなに腕を引かれて廊下に出る。
すると廊下にいた貴島君と目が合った。
「松永さん、眠そうだね。寝不足?」
「貴島君。うん、まぁそんなとこ」
恥ずかしいところを見られ、へへと笑いながら恥ずかしくなる。
貴島君にも見られてたか。
これはいかん。シャッキリしなきゃな。
少し目が覚めると、隣のちなが呆れた声で言った。
「貴島からも言ってやってよ。楓ったら男のことばかり考えてんだから」
「ち、ちな!? 何を突然!?」
「あら? 寝不足なのってそーゆーことじゃぁなかったの~?」
「違う! 変な夢見たせいだって! 変なこといわないでよ~!」
慌てて否定する。
バカバカちな!
貴島君が怪訝な顔してるじゃん!
本当、Sな性格なんだからっ。