~LOVE GAME~
低く、まるで人を馬鹿にしたような声色。
その発せられた人物を見上げると、そこには口角を不敵に上げ、バカにしたような目つきで私を見ている龍輝君の姿があった。
今のって龍輝君が言ったのだろうか?
目の前の人物は先ほどまでとは打って変わって、表情も雰囲気が違う。
私が見てきた龍輝君の穏やかそうな雰囲気はなくなっていた。
この人は誰?
その変貌ぶりに唖然とする。
あんなに柔らかく微笑んでくれていたのに、この目の前の人は誰だろうか。
この私を睨みながら妖しく笑う人は誰だろうか。
考えるまでもない。
この部屋にいるのは私と、春岡龍輝しかいないのだから。
これはいったいどういうこと?
「龍輝君……?」
戸惑う私に、龍輝君が面白がるような表情で一歩近づく。
反射的に、思わず後ずさる私。
すると笑いながらさらに、私に近づいてくる。
「逃げんなよ」
「だ、だって……」
そんなことを言われても無理だ。
本能的に身体が逃げようとしている。
「俺とお前の仲だろ?」
「仲!?」
ジリジリと近寄ってくる。
いつの間にか後ろは壁だった。
背中が壁の冷たさでひんやりする。
えっ!? えっ!? どういうこと!?
訳がわかんなくなってきたよっ!?
戸惑いから軽くパニックになりそうだった
龍輝君のキレイな顔が目の前にある。
その顔に見つめられて、不覚にも急に恥ずかしくなって俯いた。
やたらと心臓がドキドキとうるさい。
なんで急にこんな展開になってるのだろうか。
知り合いだったかどうか聞きたいだけなのに、龍輝君の様子がおかしい。
どうしたらよいかわからず困っていると、頭の上から低い声が聞こえた。
もちろん、龍輝君の声である。
「俺とお前の関係、知りたいか?」
「へ? あ、う、うん」
なんだろう。
口調もぶっきらぼうで、先ほどとは違う気がする。
顔を上げると、目の前でニヤッと不敵に笑う龍輝君。
視線にたえられず、下を向いて頷いた。
龍輝君は“いいよ”と私の顎に手をかけ、クイッと上に上げた。
えっ!? 何!?
突然の行動に焦った。
まさか、顎クイッをこんなにも自然にされるなんて思いもしなかった。
ましてや数センチ前には、龍輝君のキレイな顔のドアップ。
顔が熱くなるのを感じたけど、顔を逸らしたくても顎を掴まれ動けない。
焦げ茶色の綺麗な二重の瞳は、真っ直ぐ射抜くようにうに私を捕らえて離さないでいた。