~LOVE GAME~
「ちょっといいかな」
「あ……、うん……」
「貴島。ちょっと楓ちゃんと話したいんだ」
龍輝君は優しく微笑んだまま貴島君を振り返る。
貴島君は驚いたような顔をしていたが、私達を見比べた後、小さく「わかった」と頷いた。
「俺、先に教室に戻っているね」
「うん」
貴島君はチラリと龍輝君を見てから会議室を出て行った。
「ねぇ、今、春岡君って松永さんに話かけてたよね?」
「うん。じゃぁ、やっぱりあの噂って本当だったんだ!?」
「アレでしょう~? 昼休みに訪ねてきた松永さんを春岡君が連れ出して、何処かにいっちゃったってやつ」
「そう! 付き合ってるのかなぁ~。あ~、ショック~」
そう噂をしながら教室に戻る女子たちを貴島は見つめ、私を振り返るとニコッと微笑んで会議室を出ていった。
あぁ、貴島君が行ってしまった……。
そして、誰もいなくなってしまった……。
龍輝君と二人で残された、集会室で私の目線は虚しく空をさ迷う。
どうしよう……。
ゆっくりと龍輝君を見上げる。
「……」
「……」
別に優しい笑顔を期待していたわけではないけど……。
そんなに急に無表情にならなくても良くない?
さっきまでの愛想良い笑顔はすでになかった。
こっちが素なのかもしれないけど、その変貌ぶりにまだ慣れてない。
龍輝君はポケットに手を入れたまま、私を見つめて首を傾げる。
どこかのモデルのようなその姿に、不覚にもドキッとしてしまった。
赤い顔がばれないように顔を背ける。
「な、何? 話って!?」
「……とりあえず、あっちに行かねぇ?」
龍輝君が顎でクイッと指した所は昨日の資料室。
スタスタと行ってしまう彼を慌てて追いかけた。
資料室は日差しが差し込み明るかった。
良く見ると、段ボールが整理されており、日差しがよく入るようになっていた。
5、6畳くらいの広さになって、広々としてスッキリしていた。
「あ、鍵。閉めて」
「え?……えぇっ!?」
う、内側からしか掛けられない不思議な鍵を掛けろと!?
そんなことしたら、完全に二人きりだよ!
「誰か来たらどうすんだよ、面倒だろ。掛けろ」
「はい……」
面倒臭さそうに私を見る龍輝君。
そんな顔しなくても……。
私は素直に鍵を掛けた。