~LOVE GAME~
一週間
“一週間付き合って”
貴島君にそう言われた。
一週間で私は貴島君にちゃんと返事をしないと……。
調理室を出てから、着替えるからと貴島君と分かれた。
結局、龍輝君のクラスに行けなかった。
来てって言われてたのに申し訳なかったな。怒っているかな?
間に合わなかったけどちょっとだけ、寄ってみようか。
そう思って、私は自分のクラスではなく龍輝君のクラスへ向かった。
教室は暗幕が張られており、中は見えない。
しかし、人の気配がしなかった。
みんな交流祭のあとに行われる、夜行祭と称した打ち上げに出るために行ってしまったのかな。
校庭でキャンプファイヤーが行われたり、ちょっとしたバーベキューもあるからみんなすぐそっちに流れてしまったのだろう。
どのクラスも片付けは明日だ。
だから龍輝君のクラスもお化け屋敷のセットのままだった。
「お邪魔しま~す……」
黙って入るのもなんだか嫌だったので一声かけて中に入る。
お化け役の生徒がいないため、ただ真っ暗のままだ。
「龍輝君は何の役だったのかな……」
教えてくれなかったんだよね。
何の格好をしたんだろう。
見たかったなと残念に思いながら教室を出ようとするとーー。
「今頃来たの?」
「きゃぁっ!?」
後ろから声が聞こえて思わず悲鳴をあげる。
振り返ると暗闇の中、タキシード姿の龍輝君が不機嫌そうに立っていた。
「きゃぁじゃねぇよ、遅い。もう終ってんだけど」
「龍輝君! 脅かさないでよ。ごめんね、もっと早く来るつもりだったんだけど……」
私はだんだんと声を小さくする。
そして、龍輝君の格好に気がついた。
「……あれ? 龍輝君、タキシードで何をしたの?」
「ドラキュラ伯爵」
マントは着けていなかったが、髪を上げタキシードがよく似合っている。イケメンのドラキュラ伯爵か。
きっとこのクラスも繁盛しただろうな。
「ただ、俺のとこで女子が止まるから客の回転は悪かったな」
そうでしょうとも。
こんなかっこいいドラキュラがいたらみんな血を吸われたいと思うよ。
「似合ってるよ」
「それはどうも。……ずっと貴島と一緒だったのか?」
「あ、うん……」
龍輝君の口から貴島君の名前が出てドキッとする。
「あの……、思ったより片付けに手間取っちゃって。時間かかって……」
なんだか言い訳みたくなってしまった。
でもなんて言ったらいいかわからない。
「ふぅん……」
不機嫌そうにする龍輝君。
貴島君の話はなるべくしたくなかったけど……。
「あのさ……」
「何?」
やっぱり貴島君に告白されて、一週間だけ付き合うって話、言わなきゃダメかな。
でも……。
私は唇を噛む。
龍輝君には言いたくないな……。