~LOVE GAME~
途中で公園へ立ち寄ったけど、それでも学校から家までの道程はあっという間だった。
初めて、家まですぐに着いてしまったと思った。
「ありがとう」
私はお礼を言って頭を下げた。
龍輝君は向かい合って小さく頷いた。
「……負けだな」
「え?」
低い龍輝君に声にドキッとする。
何の話?
「俺の負けだ」
「負け……?」
「貴島と付き合ってるんだろ?」
「あっ……」
あれは、一週間のお試し期間だと伝えるべきだろうか。
「あのね、あれは……」
「お前が俺に惚れたらお前の負け。でも……、お前は貴島を選んだ」
「選んだって……」
選ぶ?
私は別に貴島君を選んだ訳じゃない……。
「私は……」
言いかけた私に龍輝君は小さく微笑んだ。
「GAME OVERだ。楓」
GAME……OVER?
言葉を詰まらせる私に背を向けて、龍輝君は振り返らず帰って行った。
どうして、こんな気持ちになるの。
龍輝君に違うと叫びたくなる。
誤解だと言いたくなる。
でも、言った所でどうなると言うのだろう。
突き放されたような気持で、悲しくて仕方ない。
それなのに、龍輝君の背中をボーっと見送る私に、涙はでてこなかった。