~LOVE GAME~
貴島君はスグには受け取らなかった。
それを見て、龍輝君は黙って机に資料を置こうとしたとき、貴島君は小さく苦笑した。
「あーあ。明日せっかくのデートなのに、次回の司会なんて気が重くなるような話するなよ」
「貴島君っ」
慌てて声をかける。
別に今、そんなこと言わなくてもいいのに……!
龍輝君は表情を変えずに、ただチラリと貴島君を見た。
「そりゃぁ、悪かったな」
そして軽く笑った龍輝君は、私と目を合わさず会議室を出て行った。
私を見ようとしない龍輝君の背中を目で追ってしまう。
デートだって聞いて、なにも思わなかったのかな……。
「……」
「松永さん?」
貴島君に声をかけられて顔を上げる。
「帰ろう」
そう言って貴島君は先に歩いて行った。
今日の帰り道はいつもより言葉少なめだった。
家の前まで来ると、貴島君は優しく微笑む。
「また連絡するね。明日……、楽しみにしてるから」
「あ、うん」
「じゃぁ、明日」
貴島君は軽く手を挙げて帰っていった。
それに笑顔で手を振り返す。
明日か……。
ふぅ、と息を吐いて家に入ろうと踵を返した。
「デートか?」
「わぁ!!」
急に後ろから声をかけられて驚いて振り返る。
そこには大学帰りのお兄ちゃんが立っていた。
「お兄ちゃん! 見ていたの!?」
「デートの割には嬉しそうじゃねぇのな」
「そんなこと……」
「初デートでそんな顔されてりゃぁたまんねぇな」
お兄ちゃんはフッと鼻を鳴らして辛辣な言葉をかける。
返す言葉もなく下を俯くいた。
わかっている。
戸惑った表情しているくらい。
明日のデートではなく、違うことを考えてしまっていることにも。
「自分がどうしたいのかよくわからないんだもん……」
ポツリと呟いた。
お兄ちゃんは私の頭をポンポンと撫でた。
「よく考えろ。いつまでもそんな顔してると相手に失礼だぞ」
失礼なのはわかってる。
痛いほどわかっているよ、お兄ちゃん。
きっと、多分。
私の気持ちはもう、決まっているんだ。
きっと、ずっと前から……。