~LOVE GAME~
「ただいま」
家に帰ると、自分が思っていたよりも元気ない声が出た。
お母さんもそれに気が付いたようで、夕飯の支度の手を止めて玄関を覗き込む。
「お帰り。どうしたの、元気ないね」
しまった。
とっさに、笑顔を作ってから笑いする。
「そんなことないよ。ちなと遊び過ぎて少し疲れただけ」
そう誤魔化すと、お母さんは苦笑した。
「それならいいけど。あ、夕飯はお肉よ」
「はぁい」
心配させないように元気な声で答えると、自室に戻って制服を着替えた。
着替え終わると、ハァァと大きなため息とともにベッドにゴロンと横になる。
頭の中はさっきの光景で埋め尽くされていた。
「ううう~」
頭を振って振り払おうとしてもこびりついて離れないよ。
「中学生の女の子……。可愛らしかったな……」
元気が良さそうで、積極的に龍輝君の腕を掴んで話しかけていた。
あの女の子とはどんな関係なんだろう。
どうしてあんな風に親し気に腕を絡ませていたの? 塾じゃなかったの?
「わけがわからない~」
ベッドの上でじたばたする。
私以外の女の子と……、あんな風に……。
胸が締め付けられるように苦しくなって、目に涙が滲む。
もっと恋人らしい関係になるかと思っていたけど、それがあまり変わらないのはまさかあの女の子がいるから?
新しく、別に好きな人でも出来たとか……?
思考が悪い方へ悪い方へと向かっていく。
「……メッセージ送ってみようか」
スマホを取り出して画面を見つめる。
『今、何しているの?』
不自然にならないように絵文字も付けて。
「送って、返事がなかったらどうしよう……」
う~んと悩んでいる時に、手が滑って送信を押してしまった。
「あぁ!!」
画面を見ると、送信になっている。
しまった。取り消そうかな……。
取り消しの操作をしようとしたら、既読になってドキッとする。
そしてすぐに、『家にいるよ』と返事があった。
「家……?」
何となく窓の外を見る。
さっき、ふたりをみかけてからそれほど時間は絶っていない。
でも、あのあとすぐに龍輝君が家に帰った可能性もあるから、この『家にいるよ』という返事は嘘だとも言えなかった。
「本当かどうかもわからないけどね……」
本当であってほしいのに、疑う気持ちが出てしまう。
明日から龍輝君の顔がまともに見れなくなりそうで怖かった。
「どうしたらいいんだろう……」
ため息とともに、龍輝君には不自然にならないように適当に可愛いスタンプを送信して、スマホをベッドに置いた。