~LOVE GAME~

――――

翌日の昼休み。
いつものように資料室へ向かうが、その足取りは重かった。
昨日のことが頭から離れない。
龍輝君に、どういうことか聞きたいけど、どうやって聞いたらいいかわからなかった。
そもそも、昨日のことを聞くのが怖いんだよね……。
でも、モヤモヤするし……。
ハァとため息をついて顔を上げると、資料室についていた。

奥の部屋の扉を開ける。
ガチャと開けると本を読んでいた龍輝君が顔を上げた。
そして、私の顔を見て怪訝そうにする。

「どうした? 何かあった?」

あ、暗い気持ちが表情に出ちゃってたかな。
いけないいけない。
慌ててニッコリと笑顔を作った。

「途中でお弁当ぶつけちゃって。崩れていたら嫌だなぁって思いながら来たせいかな」

そう言って誤魔化すと、お弁当を広げる。
もちろん、ぶつけてなんかいないから綺麗なままだ。
龍輝君はお弁当を覗き込んだ。

「楓が作ってるんだろ? うまそうだよな」
「そうかな、昨日の残りや冷凍食品とかだよ」

いつもは何も言わないのに、美味しそうとか、そうやってまじまじと見られたりすると恥ずかしい。
もっとちゃんと作ってくれば良かった。

「今度、楓の弁当食べさせてよ」
「もちろん! あ、でも今の季節は傷みやすいから少し寒くなってからの方がいいかなぁ」
「じゃぁ、夏休みにうちでなんか作ってよ。そうしたら傷むことなんてないだろ」

龍輝君の家で……?
ドキッとして一瞬言葉に詰まる。
龍輝君は気にした様子もなく、スマホをいじっていた。

「ん? なに、意識した?」

私の様子に気がついてニヤッと笑う。

「別に意識なんて……」
「楓ちゃんのエッチ~」
「! もう!」

龍輝君のからかう言い方に頬を膨らます。
あ、今のこのふざけた雰囲気の時なら言える気がする。
空気に後押しされて、意を決して言ってみた。

「そういえば、昨日女の子といるところを見ちゃった」

微笑みながら軽い感じで言ってみると、龍輝君はハッとした表情になった。
私の顔を見返した龍輝君は真剣な眼差しをしており、さっきのふざけた空気感は一瞬で消されてしまった。

え……、もしかして聞いちゃ行けなかった……?

けれど、言ってしまったものは取り消せない。

「親しそうだったけど」

笑顔を作りながらさらに聞いてみる。

「あぁ、うん。友達の妹」

龍輝君はニコッと笑って答える。

「あ、そうなんだ……」

"友達の妹"

昨日ちなが予想していた言葉と同じ。
でも、龍輝君の様子に妙に違和感を感じた。
そもそも友達の妹があんなにベタベタする?
一方的に好意を寄せられているとかかな?

「それよりさ、夏休みどこに行こうか」

龍輝君は話題を変えた。
さらに話を聞きたかったが、龍輝君はなんだかさっきの話は続けたくなさそうで、私もそれ以上は追及するのをやめた。

「あ、えっとそうだなぁ……。やっぱりお祭りは絶対行きたいかな」
「終業式の一週間後にあるやつだよな。いいよ、行こう」

龍輝君が優しく微笑むので、うんとニッコリ笑顔を返した。





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